2026年5月15日(金)、舞台「あゝ同期の桜」の制作発表会見が行われました。演出を手がける錦織一清さんをはじめ、主演の中山脩悟さん、岩永洋昭さんら出演キャスト一同が登壇。戦後80周年の節目を挟みながら3年連続の上演となる今作への思いを、それぞれが語りました
(後列左から)渡口和志、伊藤セナ、石川大樹、岡澤由樹、片岡滉史朗、高野皓平、新井元輝
(前列左から)岩永洋昭、中山脩悟、錦織一清
制作発表会見に先立ち、一行は靖国神社の能楽堂ににて開催された「武魂継承祭」にて舞台「あゝ同期の桜」の1シーンを奉納。制作発表会見も、このシーンの芝居からスタート。
続いて登壇者からのあいさつ、質疑応答となりました。
錦織一清(演出)
昨年の戦後80周年という日を挟みまして、今年で3年連続の公演となりましたけども、今年も新しいメンバーで新しい風が入ってきました。また、木更津市長のお声がけで、演劇を楽しむ会の方々のもとで木更津公演もできるようになりまして、少しイレギュラーではありますけども、こうして新しい『あゝ同期の桜』を作ろうという目標をいただけたことに感謝しています。
僕がつくる演劇はわりと明るめのものが多いんですが、こういうテーマを扱いながらも、本当に若者たちが生き生きとキラキラと青春を過ごした、そんな“爽やかな作品”にしていけるよう、また努力したいと思います。
もう10数年前になると思うんですけども、当時はニッポン放送さんのスタジオを借りて何日間かやって、ほんとに小さい中でやった芝居だったんですけども、印象に残っているのは、まだうちの親父が生きてる頃で。親父は錦織家の三男坊でして、長男は海軍で戦死して、もし生きていたら僕の叔父であったろうという人がいたんで、子供の時から戦争の話をよく親父から聞かされていたんです。
親父に“今度、第2次大戦の最後、特攻していく人間たちの話を演出するよ”と言ったら、ちょっと感慨深い顔をしたんです。『あの当時は可哀想だったね、女の子がみんなモンペなんて履かされちゃってさ』って言いながら泣いていた親父の姿が、すごく印象に残っています。
さっきも靖国神社のほうを正式参拝してきましたけども、僕は去年還暦を迎えまして、戦争っていうのがだいぶ前の話に感じるんですよね。ただ、生まれる20年前まで戦争をやっていたってことを、今この年になると“戦争の頃のほうが近かったんだな”って思うようになりまして。このカンパニーの若いみんながこれを演じることによって、戦争というものをもっと身近に感じて、僕から感じたものを後世に語り継いでいく人間になってくれたらいいなと思いながら作っています。不謹慎かもしれないですけども、今回また3年目でやらせていただくことになったことも、僕の中では喜びと嬉しさがありました。
中山脩悟(諸木役)
今回、初舞台で初主演という形でやらせていただくんですけれども、この歴史ある作品に参加できるということが、まず役者としてすごく嬉しかったです。ただ、それと同時に、ものすごい不安と、この作品に対する責任感が一気に押し寄せてきたのを覚えています。僕はまだ役者として経験も浅く、実力が足りないところもあると思うんですけれども、それでも、このエネルギーや“今の自分にしかできないもの”を舞台上で表現できたらいいなと思っています。
脚本を読んだ感想としては、戦争というものが歴史の一部であることはわかっていたんですが、そこまで深く考えたことはなかったので、今回読ませていただいて“自分らの世代に一番伝わってほしい話だな”と思いました。自分たちの代では、戦争について深く考えている人はまだ少ないんじゃないかなと感じることが多いので、そういう人たちにメッセージを届けられたらいいなと思っています。
家族の反応は、ものすごく喜んでくれました。特に母親は舞台人でもあったので“しっかりやりなさい”と言われて、父親からも“やるからには精一杯頑張って、今できることをしっかりやりなさい”と言われました。
―知覧特攻平和会館を訪れて
2月の末に鹿児島県の知覧特攻平和会館に行かせていただいて、自分自身いろいろ勉強したいなという理由で行ったんですけど、1番感じたのは、みんな特攻って志願していくものなんですけれども、“なんでなんだろう”って、自分は行くまでずっと不思議だったんです。行ってわかったのは、誰かを守りたいっていう気持ちがみんなにあったんだなということでした。それが家族だったり、友人だったり、愛する人だったり、そういう“守りたいもの”を抱えながら行っていったのかなと、僕自身思いました。
もう1つ思ったのは、“明日があるって当たり前じゃないんだな”ということです。言葉では今まで聞いたり言ったりしてきましたけれども、実際に“本当に明日がないかもしれない”という恐怖や、“自分がどうやって死ぬかがわかっている”というリアリティは、すごく怖いことだなと感じました。でも、それが今の世界でも実際に起こっている国があるということが、僕は本当に心苦しいなと思いました。
だからこそ、こういうことがあってはいけないし、自分たち若い世代にたくさん見てもらえたら、すごくいい機会になるんじゃないかなと思っています。
岩永洋昭(油庄司役)
前回出させていただいた時も、僕の周りや家族にもすごく多大な影響があって、特にまだ小学生だった娘が本当に戦争に興味を持ってくれただけでも“やる意味があったのかな”と思いました。今年は今年で、さらに一人でも多くの方々に戦争の尊さを伝えていければという思いで臨ませていただこうと思います。
僕は長崎出身で、18歳まで長崎で育ったので、幼い頃から平和教育はすごく受けてきましたし、祖母からも戦争時の話をいろいろ聞きながら、そういう環境で育ってきました。そういう身として、去年初めて戦争関連の作品に出させていただいたんですが、すごく使命感を持ちながら演じました。その反応として、娘にも“戦争のことを伝えなきゃ”と思いつつ、今までは漠然としか話してこなかったのが、その子がすごく興味を持ってくれて、夏休みの題材にして感想を書いてくれたりして。こういう作品で伝えていけるなら、この上ない喜びだなと、役者としても長崎県民としても嬉しかったです。
今年は何人かキャストも変わりますし、また去年とは違った化学反応が絶対に起きると思います。さっき靖国でもやらせていただいたんですけど、中山くんの“目”がすごくて、そこで勝手に自分の中で化学反応が起きたんです。カンパニーとしても、同じ作品でも全く色の違うものになるんじゃないかというワクワク感がありますし、何より来てくださる皆さんに、平和の尊さや、今自分たちがどれほど豊かな世界に生きているかということを伝えられるように頑張りたいと思います。
個性豊かなキャストが集結——それぞれの役への向き合い方
今作には、様々なバックグラウンドを持つ若手キャストが集結しています。
昨年に続き中沢一郎役を演じる石川大樹さんは、「忠義を尽くす人物が仲間との交わりの中で変化していく様を、去年よりさらに大きく表現したい」と意気込みを見せました。神崎武彦を演じる片岡滉史朗さんは、自身も武道の心得があることから「日本人としての誇りや、強く生きるという学びを役を通していただきながら、精一杯努めたい」と話しました。
昨年に続き、飛行機乗りに憧れる秀才・原清明役を務める伊藤セナさんは、「夢をひたむきに追う純粋な青年の気持ちが、青春の中でどうあらわれるか。そこが見どころになるかなと思っています」とコメント。初舞台となる髙野皓平さんは、仏教徒として寺を継ぐ立場にある塚本春暁役について「仏教的な死生観をうまく絡めながら表現できれば。この素晴らしい作品が初舞台になることを誇りに思っています」と語りました。
3年連続出演となる渡口和志さん(西幸弥役)は、「クリスチャンとして育った厳しさ、そして作中で唯一お母さんとのシーンがある役として、前回よりもより良いものをお見せできるよう精進します」と述べました。同じく3年目となる新井元輝さんは、17歳という設定の水木二等飛行兵曹役について「世の中を何も知らないまま仲間の青春に加わっていく水木くんを、全身全霊でアタックします」と力を込めました。上官役の岡澤由樹さんは、北区AKT STAGEで研究生として本作に関わった経験から、「先輩から役を受け継いでいることへの喜びを感じながら、この作品を見た若い人たちがいつかやりたいと思ってもらえるような舞台にしたい」と抱負を語りました。
そして、報道陣から中山さんの起用経緯と期待について問われた錦織さんは、今年の"諸木"に特別な思いを抱いていることを率直に明かしました。
「この諸木っていう役は、なかなか難航するんですよ。その時代を、理路整然と、“たまたま偶然今の世の中に生まれてきただけだ”っていうことを冷静に言える人間というのは、ちょっと見つけにくくて。でも今年の中山脩悟くんは、青山学院を卒業したばかりなんですが、最初に会った時から本当にしっかりした青年で、僕の22歳の頃とは育ち方が全然違うなと感じました。昨年の中山優馬も素晴らしかったけれど、彼とは違うアプローチで、今年の脩悟の諸木も、爽やかで面白いものになるんじゃないかなと思っています。この諸木役のまた新しい逸材に僕は出会ってしまった感じだから。
僕は当時の学徒たちの旭日旗への寄せ書きの字体を見ると、今の若者とは違う教育の深さを感じるんです。その楷書で書かれた字体の漢字に、脩悟くんが見えたというか、全く余計なカラーがついていない。この透明感には圧倒されているんで」
中山脩悟さん演じる「諸木」が作品にどのような新しい息吹をもたらすのか注目したいところです。
<公演概要>
あゝ同期の桜
原作:榎本滋民
脚本:上田浩寛
演出:錦織一清
オープニング振付:パパイヤ鈴木
出演:
第十四期海軍飛行予備学生
諸木文晴 … 中山脩悟
中沢一郎 … 石川大樹
神崎武彦 … 片岡滉史朗
原 清明 … 伊藤セナ
水木二等飛行兵曹… 新井元輝
西 幸弥 … 渡口和志
塚本春暁 … 髙野皓平
岡澤参謀 … 岡澤由樹
庄司上等整備兵曹…岩永洋昭
豊島中佐 …渋谷天笑(松竹新喜劇)
松岡雪枝 … 惣田紗莉渚
片岡令子 … 中久喜文音
西まき … 板垣桃子(桟敷童子)
老人・上官… 錦織一清
【東京】2026年8月13日(木)〜8月17日(月)
場所:三越劇場(〒103-8001 東京都中央区日本橋室町1-4-1 日本橋三越本店 6F)
8月13日(木)14:00開演
8月14日(金)14:00開演/18:00開演
8月15日(土)12:00開演/16:30開演
8月16日(日)12:00開演/16:30開演
8月17日(月)14:00開演
チケット料金(全席指定・税込):1等席 9,800円/2等席 6,000円/3等席 4,000円
【木更津】2026年8月22日(土)
場所:かずさアカデミアホール(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-3-9)
8月22日(土)12:00開演/16:30開演
木更津公演主催:木更津舞台芸術を楽しむ会
チケット料金(全席指定・税込):特別料金 6,000円
0コメント