舞台「星の流れに」稽古場取材② 作・演出 羽原大介さんインタビュー

映画『パッチギ!』『フラガール』、NHK連続テレビ小説『マッサン』、近年ではドラマ『トリリオンゲーム』など、数々のヒット作を手がけてきた脚本家・羽原大介さん。シナリオライターとして活躍する一方で、2022年に演劇ユニット「羽原組」を立ち上げ、小劇場で熱量あふれる舞台を作り続けています。今回の新作「星の流れに」は、戦後の混乱期を生き抜く女性たちを描いた群像劇。主演に惣田紗莉渚さんを迎え、羽原さん自身が作・演出を務めます。

Q:タイトル「星の流れに」と、この作品を書こうと思ったきっかけ

羽原:「星の流れに」は、戦後不況の中、生きるために春をひさいで暮らしていた女性の身の上を歌った流行歌です。その曲から着想を得てタイトルをつけました。主人公も戦後不況の中で生きるしかなかった時期があったという設定で、母親や妹との家族の物語が縦軸になっています。食べるものも着るものもない絶望から、どう前を向いて立ち上がり新しい人生を歩んでいくまでを描いています。

今年は終戦80周年で戦争もののオファーをいくつもいただいていて、大手演劇会社のオファーで戦時中の甲子園を題材にした作品を書いたんです。それをきっかけに、自分なりの戦後観をオリジナルで描いてみたいと思いました。戦後の不況や格差を調べていくうちに、今の時代とあまり変わってない部分があると感じて、戦後を舞台にしながら今に通じる物語にしたいと思うようになりました。

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Q:戦争体験のない羽原さんが、戦争に関するシナリオを描く苦労について

羽原:もちろん、戦争に関するものはこれまで何本か、あるいは連続ドラマの中で、例えば朝ドラなんかだと必ず戦争パートがあるので、その都度受験勉強のように戦争のことを調べて、関連の映画を見たり、ドキュメンタリーを見たりしてインプットしていくんですけれども、今回とにかく大事にしたかったのは、戦争っていうとやっぱりどうしても重く苦しく辛い作品になるのが嫌だったので、このとんでもなく重たい荷物をしょってる人たちをどうやって明るく描くのか、どうやってお客さんに楽しんでもらえるのかっていうこと、そこが1番大変で、七転八倒してひねり出したというか。見終わった後、爽やかな気持ちで劇場を後にしてもらいたいというお題を自分に課して、そのいろいろ調べた戦争の話というのをどうやってそこに消化するのかっていうことに苦労しました。 ですから、間違いなくこれはもう見終わった後、明日も頑張って生きていこうと思って劇場を後にしてもらえる作品になると思います。  

Q:主演の惣田紗莉渚さんについて

羽原:2021年に新橋演舞場で上演された『未来紀の番人』というお芝居を私が書かせていただいたのですが、その時にヒロインを演じていただいて、とても好印象を持ちました。その後少しお話をさせてもらう機会もあり、いつかは羽原組でも出演してもらえたらなということでお話していたんですが、ようやくその夢が実現したということです。

今回は元娼婦のような設定で、それは紗莉渚さんだけじゃなくて、グループ全体が7人ぐらいの元娼婦という設定なんです。台本を読んだ段階では紗莉渚さんもだいぶ戸惑った部分もあると思うんですけれども、実際に立って稽古をしてもらうと、やはり紗莉渚さんが元々持っている正直さというか健やかさというか、天真爛漫な感じが前面に出てきて、決して暗い影のある役ではなく、常にポジティブで明るい明日を目指していくというスタンスで演じてくださっています。大変しっかりとした座長ぶりで、その7人のグループのリーダーの役なんですけれども、稽古中も、あるいは稽古終わった後も、リーダーとしてグループを引っ張っていってくれていると思います。最初は「座長はやったことないんです」と不安を抱えていたようですが、稽古が始まったらすっと真ん中に立って、ぐいぐい皆を引っ張って、稽古場の雰囲気を明るくしてくれました。とても素晴らしい座長ぶりだと思います。


--- 羽原組が目指すのは「高校野球の決勝戦のようなお芝居」


Q:羽原組の舞台づくりについて

羽原:羽原組では「高校野球の決勝戦のようなお芝居」を目指しています。大劇場の豪華な美術や衣装ではなく、小劇場で全力プレーをする。エラーがあっても全力でぶつかる、その熱が魅力なんです。役者さんの熱とお芝居で勝負する現場にしたいと思っています。

私は日常的にはプロのシナリオライターとして活動しています。外部から演出のオファーをいただくこともありますが、一切お受けしていません。演出はここ(羽原組)でしかやらないと決めています。プロのシナリオライターである自分が、あえて高校野球のようなアマチュアのグラウンドに降りてきて、まだこれからスターを目指す、あるいはもっと技術を磨きたいという役者さんたちと一緒に、泥臭く、汗臭いお芝居を作る現場にしたいと思っているんです。演出するときも地に足がついた、「お客さんからどう見えるか」を意識しています。立派な美術や衣装があるわけではないので、役者さんの熱とお芝居そのものが勝負。そこが最大限にお客さんに伝わるようにと心がけています。

私はもともとつかこうへいさんの運転手からキャリアがスタートして、そこで演劇を学びました。つかさんの元で培った哲学は自分の骨になっていて、染み付いています。基本、演劇出身の脚本家だと自分では思っていますし、つかこうへいの哲学みたいなものはずっと大事にしていきたいなと思っています。

Q:本作の見どころと観客へのメッセージを

羽原:踊り子を目指す女性たちの物語でもあるので、歌と踊りのシーンが都合8曲ほどあります。その華やかさも大きな見どころですし、ほぼ全ての登場人物が戦中に心や体に傷を負っていて、それを克服していく群像劇でもあります。重たいテーマですが、どう明るく描くかにこだわりました。昭和歌謡も流れますが、スピーディーでスリリングな展開で、最後は必ずハッピーエンドになる。笑って泣ける、まさにジェットコースター演劇だと思っています。我が師・つかこうへいのスピード感に負けないテンポで物語が進み、観客の皆さんには必ず希望を感じてもらえるはずです。ぜひ元気になるためにも劇場に足を運んでいただけると嬉しいです。


<公演概要>

羽原組 戦後80年スペシャル『星の流れに』

作・演出:羽原大介

主演:惣田紗莉渚

期間 2025/11/18 (火) ~ 2025/11/24 (月)

劇場 赤坂RED/THEATER

Story

昭和23年、東京上野

誰もが生きるのに必死だった時代、着る物、食べる物、住む家も失った絶望のどん底で、

夜空の星を見上げ、夢を諦めなかった人たちの物語。

「もう普通じゃないアタシらが、もう一度人間らしく生きる為、幸せに生きる為には普通のことをしててもダメ。

この焼け跡にアタシらの為のアタシらの国、独立国を作ろう!」

ーキャストー

惣田紗莉渚

久留飛雄己 伊藤わこ 安孫子宏輔 しるさ 浦島三太朗 十河茉由 田久保宗稔 

永山愛理 古田小桜 ランディ井上 百瀬うか 小島優花 Toshie  古賀豊 

ースタッフー

振付=古賀豊/舞台監督=逸見輝羊/照明=大場正之/音響=山本能久/音響操作=平野美羽/制作=伊藤沙耶/宣伝美術=鈴木めぐむ/HP=田久保宗稔/衣装=藤田美歌子

企画製作=チームハバラ

公式サイト https://www.team-habara.com/stage

Corichチケット

https://ticket.corich.jp/apply/392102/


東京FUNコンシェルジュ   Scopri Tokyo

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